Small two of Pieces 3




綺麗な歌声が聞こえてくる。懐かしいようなそれは自分のすぐ横から聞こえていた。
確か自分は六神将に連れられて黒い陸艦に乗っていたのではなかったか?
しかし、今自分が横たわっているのは砂地で、時折水が寄せては引いていく細波のような音まで聞こえていた。
夜明けが近いのか水平線の向こうがほんのりと橙に染まっている。
よろよろと身体を起こすと、隣に座っていた朱がニコリと微笑んだような気がした。
朱はルークだった。
「やっと起きたか。なかなか起きねぇから死んでるのかと思ったぜ」
気づいたルークはいつもの口調でそう言って手を差出す。
「ルーク・・・?」
「まだ寝ぼけてんのか?俺以外の誰に見えるんだっつーの」
ルークの手を掴んだイオンを引っ張って立ち上がらせると、くるりと背を向けた。
「皆が心配してる。早く戻ろうぜ」
まだどこか訝しむような様子のイオンを無視してルークは歩き出した。
もうそろそろ皆が起きだす時間だ。否、すでにもう起きて支度をしているのかもしれない。
後ろの足音が聞こえるのを確認しながらルークは簡易宿泊所へと足を向けるのだった。


戻ると宿の前で待っていたのはガイだった。
「どこ行ってたんだ、ルーク?皆待ってるぜ」
小走りに寄ってきてルークの後ろを歩いていたイオンに気がついた。
「イオン!?」
思わず出した声が思いのほか大きく出て、宿泊所内に居た皆が出てきた。なんでどうしてと騒ぎ出す皆に問い詰められて、嘘臭いなと思いつつも適当な言い訳を述べると、一応納得してくれたのか静かになった。


体力の少ないイオンの体調に合わせて休憩をこまめに取りながらもようやく一行はケセドニアにたどり着いた。マルクト領事館で手続きをし早々に連絡船に乗り込んだ。
ヴァンを含む先遣隊はすでにアクゼリュスへ向かったとの事だった。


カイツールへ着くとアクゼリュスはもう目前に迫っていた。
「アクゼリュスへはもう一息ですわね」
金の髪を潮風にのせナタリアは意気揚々と真っ先に船を下りていく。その後をティア、アニスと続き一番最後にルークが降りる。
「確かここの北東にあるデオ峠を越えるんだったよな」
「さぁ、ルーク!行きますわよ」
ナタリアが先を急かすように最後尾を歩くルークを振り返り、そこでようやくルークの異変に気付いた。
「ルーク・・・?」
「う・・・」
ひどい頭痛に頭を抑え立ち止まっているルークを心配そうにガイが覗き込む。
「大丈夫・・・」
ともすれば肩を支えてきかねない心配性なガイを手で制して押しとどめるとフォンスロットに集中すれば聞こえてくるアッシュの声。
『レプリカ、今どこにいる・・・?』
(今は・・・)
『いや、いい。見えた。カイツールか・・・。話がある。アクゼリュスで待ってる』
(でも、『ルーク』そこは・・・)
『「アッシュ」だ。その名はもうお前のもんだ』
(・・・アッシュ・・・。ヴァンがすでにアクゼリュスに着いているはずです。気をつけて・・・)
『・・・お前もな、ルーク』
(・・・!!)
名を呼ばれて顔に熱が集まる。頭痛に苦しんでいるのから一転して顔を真っ赤にさせたルークを皆が不思議そうに見つめていた。
「いつもの幻聴か?」
「いや、アッシュっからだった」
「アッシュってあの神託の盾の・・・?」
「話があるみたいだ。アクゼリュスで待ってるって」
そうしてルーク達は瘴気溢れるアクゼリュスへと向かうのだった。