奇麗事ばかりを並べ立てて

あたかも自分が全て正しいように振舞うお前が

本当は大嫌いだった――-



失った友情は
        二度と戻らない
    One's lost friendship never returns.







執務も終わり辺りが夕闇に包まれた頃教皇宮から駆け下りてくる影がひとつ。
濃紺の髪をなびかせた彼は急いでいた。
一刻も早く自宮――双児宮にたどり着きたかった

彼には教皇以外知らない秘密があった。
双子座の宿命の下に産まれた者は2人いたのだ。
聖衣を受け継げるのは1人のみ。それ故もう一人はサガのスペアとしてこの聖域に隠されてきた。


「サガ」
人馬宮に入ったとたん声をかけられた。
人懐っこい笑顔した彼はこの宮の守護者アイオロスだった。
「サガ、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「それでさ、明日皆で・・」
「ごめん、アイオロス。急いでるからまた後で」
アイオロスの言葉を遮ってサガは柔らかな笑みをするとそのまま再び駆け出した。
「まぁいいか、明日呼びに行けば」



「カノン!」
双児宮の自室に入るなりサガは嬉しそうに目の前にいる少年に抱きついた。
サガより幾分か明るい蒼の髪のカノンと呼ばれた少年はそんな様子のサガを抱きとめて濃紺の髪を撫でる。
「おかえり、サガ」
「帰りが遅くなってごめんね」
「いいんだ、こうして帰ってきてくれるだけで」
「今日は明日の分の仕事も終わらせてきたんだ。だから、明日は1日一緒にいられる」
「本当に?」
信じられないというような表情をしながら、けれども顔を綻ばせて嬉しそうにカノンは言った。