シンプルではあるが上質なソファで適当に本棚から選んだ本を読んではみても難しすぎて頭に入らないどころか眠気すら襲ってくる。
眠気覚ましに簡易キッチンで湯を沸かし、紅茶を二人分入れ、その辺に脱ぎ捨ててあった衣服を纏めたり。
自分の本日分の課題や簡単な書類の仕事も終わってしまったのではっきりいってやることがない。
キッチンを挟んで二人の部屋は作られていてやや広めのその空間は、部屋の主がいるにもかかわらずうすら寒く感じられた
アッシュはルークが部屋に入ると一瞥したものの、それっきりこちらを見ることも無く無言で執務をしている。
彼は彼なりに仕事を早く済ませてルークを構ってやりたいと思ってはいるのだろうが、鈍感なルークがそんな思惑に気づくわけが無く、放置されたままのルークはやはり退屈だった。
時間を潰すことにもだんだんと飽きてきて、部屋の南側に位置する大きな窓の前にある机を、紅茶を啜りながら盗み見る。
この部屋の主であるアッシュは黒ぶちの細いフレームの眼鏡をかけ、部屋に居座っているルークを無視して黙々とペンを走らせていた。
執務中の彼は非常に穏やかで。時折唸っては眉間に皺を寄せて難しそうに考え込んでいる。
そんな姿も自分とは違い男前で好きだとルークは思っている。
と、ここでるーくはちょっとした悪戯を思いつた。
乱暴に読みかけの本を置くとアッシュの背後にまわり、メガネを持ち上げて奪い取った。
「おい、コラ」
アッシュはルークの悪戯に眉間に皺を寄せた。
椅子をくるりと回しルークと向かい合わせになる。
「返せ」
「返して、欲しい・・・?」
コテンと頭を傾けたその姿は何とも可愛らしいのだが、仕事に差し支える以上早く返してもらわねばならない。
「ルーク」
念を押すようにいつもは呼んでやらない名前を呼ぶと、ルークの頬が見る見るうちに赤く染まっていく。
「もうすぐ手が空くから、そしたら嫌というほど構ってやるよ」
それでも少し不満げなルークはちらっとアッシュを横目でみると頬を染めたまま小さく呟いて。
「・・・じゃぁ・・・キス・・・して・・・」
なかなかに可愛いことを言うルークに満足してアッシュは優しく彼の唇を食んだ。








                                            20090704