何かを失うって事を、
身近な者の死によって改めて思い知らされた。




fine weather after the heavy rain


iいつか自分もそこに居たという存在そのものである
身体さえ残さずに跡形もなく消えてしまうのだろうか?
いや、それより
あいつを
あいつが居なくなってしまったら…?

怖い…。



最近、何かと考えに耽る事が多くなったと自分でも思う。
けれど、考えずにはいられない。
アクゼリュスの事、師匠の事。
人の命の儚い事。
そして、
大切な者を失ってしまったときのこと…。



不意にポツッと空から冷たいものが落ちてきて、
空を見上げれば灰色の雲が一面を覆って。
濡れてしまう前に宿に帰らなければ。
そう思い立ち上がって。
けれど、
冷たい雨が意外と気持ちよくて、
そのまま再び思考の波に入ろうとした時


「レプリカ」


あいつの声が聞こえた気がした。

聞き間違いか…?
再び波に入りかけた時


「レプリカ」


また、聞こえた。
どうやら気のせいではないらしい。



「何やってんだ、風邪引くぞ」



差し出された傘を無言で受け取り
でもそれを開かないままでいると呆れた様な溜息が聞こえて。


「てめぇ、いいかげんにしろ」
「ああ、うん…ごめん……」


いつもは愛想がなくて悪態ばかりついてる俺が
素直に謝ったのが珍しいみたいで、あいつは呆気にとられている。


流れる沈黙。


「・・・・・・・・ってた」
「…え?」


沈黙を破るように口を開いた言葉は聞き取れなかったみたいで。


「アッシュの事、考えてた」


真剣な、それで居てどこか思い詰めたような色の瞳。
いつもならこんな事絶対に話さない。
話してしまうのはきっとこの雨のせいだ…。


「どうした、急に?」
「イオンが死んでさ、何か怖くなったんだ」



「アッシュが…」
「俺が?」


俯いているルークの顔はハッキリとは見えない。


「アッシュが、俺の前から居なくなったら…そう思うと俺っ!」


なるほど、そういうことか。
思わず抱きしめたくなるほどの愛しさが込み上げてくる。
腕を伸ばし手繰り寄せると容易くその腕の中にすっぽりと納まった。
その小さな温もりでさえも愛しい。
ルークは羞恥にますます俯く。



「俺なら平気だ」
「でも、もし…」
「もし、とかそういう仮定は考えるな」


アッシュの言葉にルークが顔を上げると目の前には珍しく真摯な深緑の瞳。


「俺はお前を置いて死んだりしない」



どこからそんな自信がくるのか。


何か言おうと顔を上げた瞬間、
声を発する間もなく、アッシュの唇にふわりと塞がれた。


「・・・!」


「少しは俺を信じろ」


見上げたその顔は今までの不安をも打ち消してしまうくらい
自信に満ち溢れていて…。
悩み続けた自分がバカらしくなってきた。


でも、きっと自分はそれを信じていいのだろう。


「…なぁ」
「ん?」
「…も、一回」
「…?」


無言のまま視線だけで問い返すアッシュに、
ルークは頬を染めて俯きながら


「キス、してよ」



ほどなく、指先で顎を持ち上げられる。
ルークがゆっくりと瞼を伏せると
それを待っていたかのように唇が降りてくる。



いつの間にか、雨も止んでいた。















アッシュは傘なんて持ってなさそうだけども・・。
相手をガイにしようか迷ったんだけどあえてアッシュで。